主な熱処理加工
焼入焼戻し

「鋼を硬くし、又は強さを増すために、Ac3又はAc1変態点以上の適当な温度に加熱した後、適当な冷却剤で冷却し(焼入れ)、ついでその操作によるぜい性を改善し、又は硬さを調節し、若しくはじん性を増すために、Ac1変態点以下の適当な温度に加熱した後冷却する(焼戻し)熱処理加工。」(JIS B 6913)

主な加工材料:S45C、S55C、S60C、SK5など

調質

「鉄鋼製品を焼入硬化後、比較的高い温度(約400℃以上)に焼戻して、トルースタイト又はソルバイト組織にする。」(JIS B 6905)

「調質とは鋼の結晶粒子を微細にして鋼質を調整し、強じん性を実質的に向上させる操作をいう。通常、焼なまし、または焼入、焼戻し(焼戻し温度400℃以上)の加熱操作によるのが普通である。」
(大和久重雄「金属熱処理用語辞典」P120)

主な加工材料:S45C、S55C、S60C、SK5など

高周波熱処理

「導電体の周りにコイルを配置して高周波電流を流すと、導電体表面部分に誘導電流を生じて発熱する。このような現象を利用して行う熱処理を高周波熱処理という。焼入に利用される場合がほとんどであり、高周波焼入とよばれている。」
(日本熱処理技術協会「熱処理技術入門」P31)

浸炭

「加工材料の表面全体又は部分の表面硬化を目的とするもので、浸炭剤の中で、加工材料をAc3変態点以上の適当な温度で適当な時間加熱表面層の炭素濃度を高めた後、焼入焼戻しを行なう処理。浸炭窒化の場合には、炭素濃度とともに窒素濃度も高める。」(JIS B 6914)

浸炭の方法としては、1.固体浸炭 2.液体浸炭 3.ガス浸炭 4.真空浸炭 がある。弊社の場合は滴注式ガス浸炭を行なっている。

「滴注式ガス浸炭においては変成ガス発生装置は必要とせず、浸炭炉内に直接有機剤で、C-H-Oの成分を持つ、メチルアセート、イソプロバノール、メタノールなどの混合物を滴下気化させ、そのガスによって浸炭が行われる。」
(宮永文吾・鈴木健司「熱処理技術の選択」p51)

主な加工材料:SPC、S45C、SCM415など

浸炭窒化

「鉄鋼を変態点以上に加熱して、ガス雰囲気からC(0.8%C)とN(0.3%N)を浸透させて表面硬化する方法を、浸炭窒化略して炭窒化という。(中略)浸炭窒化法は硬く(HRC63)耐磨耗性に富むケース(層厚0.07〜0.7mm)を得るのに好適で、浸炭窒化層は浸炭層よりも焼入れ性がよい。したがって、浸炭窒化焼入れすると所要の硬度をもってケースが得られる。油焼入れすれば変形が少なく、硬い層が得られる。
素材としてはC<0.25%のC鋼、Cr-Mo鋼、Ni-Cr-Mo鋼などが使われる。浸炭窒化したものは焼戻しによる軟化抵抗が大であり、また残留応力の分布が好ましい形なので疲労と衝撃に強くなる。したがって、歯車、シャフト、カム、ピンなどの表面硬化に利用されている。」
(大和久重雄「金属熱処理用語辞典」P96)

主な加工材料:SPC、S45C、SCM415など

窒化

「鋼材の表面に窒素を浸透させて窒化化合物をつくって硬化させる窒化処理の歴史は古く、第二次大戦中すでに航空エンジンなどではかなり使われていた。その後ここ30年くらいの間に、塩浴窒化(タフトライド」、ガス軟窒化、イオン窒化などの新しい技術が開発され応用範囲がいちじるしく拡大してきている。」
(宮永文吾・鈴木健司「熱処理技術の選択」p51)

ガス軟窒化 (軟窒化)

「加工材料の耐磨耗性、耐焼付性、耐疲労性などを向上させることを目的とする表面硬化処理方法で、適当な温度で適当な時間加熱し、加工材料の表面全体又は部分的に、窒素又は窒素及び炭素を同時に拡散させ、窒化層を形成させる熱処理。

(a) ガス軟窒化 加工材料を窒化性ガスを主体とする雰囲気中で加熱し、軟窒化を行なう加工。
(b) 塩浴軟窒化 加工材料を窒化性塩浴中で加熱し、軟窒化を行なう加工。」
(JIS B 6915)

ガス軟窒化
「塩浴窒化には公害問題があるのでその代替として開発されたのがこのガス軟窒化であって、そのよさが認められて急速に普及してきた。その方法は、吸熱形変成ガス、もしくは滴注式分解ガスなどの弱い浸炭性雰囲気や、N2ガスをベースとしこれに、30%〜70%のアンモニアガスを加えて、550〜600℃に加熱して窒化を行なうものである。
対象となる鋼種は、リムド鋼の板か合金鋼まで広く利用され、表面硬さは、HV450〜900の範囲となる。」
(宮永文吾・鈴木健司「熱処理技術の選択」P57)

主な加工材料:SPC、S10Cなど

焼なまし

「焼なましは通常、素材の被削性を改善する目的で行う。焼なまし温度はAc3変態点以上30〜50℃とし、鋼材中心部まで均熱して組織をオーステナイト化した後徐冷する。」
(日本熱処理技術協会「熱処理技術入門」P16)

「焼なましとは鉄または鋼の軟化、結晶組織の調整または内部応力の除去のため、適当な温度に過熱した後、ゆっくり冷却する操作をいう。」
(大和久重雄「金属熱処理用語辞典」P192)

応力除去焼なまし

「応力除去焼なましでは、組織の変更が要求されるわけではないので、酸化脱炭の少ない変態点以下の低温で処理される。したがって低温焼なましともよばれる。」
(日本熱処理技術協会「熱処理技術入門」P32)

焼ならし

「A3点以上の温度に過熱して均一なオーステナイト組織にした後、大気中で放冷する熱処理を焼ならしという。焼ならしによって初析フェライトが細かくなるとともに、微細パーライトが発生するので、焼なまし組織に比べて機械的性質は大幅に向上する。」
(日本熱処理技術協会「熱処理技術入門」P15)

真空熱処理

「真空炉中で行なう熱処理の総称」(JIS B 6905)
「真空は、無酸化熱処理法としては、最も優れた雰囲気である。通常1〜10-3Paの真空度で操業される」
(日本熱処理技術協会「熱処理技術入門」P33)

「金属を大気中で加熱すると、空気中の酸素、水蒸気などにより表面が酸化作用をうけて酸化物をつくる。各種雰囲気ガスや不活性ガス中で加熱を行えばよいのだが、その際使用したガスの組成あるいは純度が問題になる。」
「真空であれば1ppmの不純物ガスが残存している真空圧力は10-3Torrに相当する。したがって、今日の真空技術でもってすれば、10-3Torr程度の真空をつくることは比較的に容易で、かつ安易に得られる。通常の熱処理では酸化されやすい金属でも光輝熱処理を行うことができ、減圧下で加熱することより金属面のスケールも除去され、さらに脱ガス作用が行われる効果もある。」
(池永勝「これからの熱処理技術」P44)

真空焼入れ
「真空中で行なう焼入れ操作を、真空焼入れという。真空中で加熱し、中性ガスの対流冷却によって焼きを入れるのが普通である真空焼入れは光輝焼入れのひとつとも考えられる。」
(大和久重雄「金属熱処理用語辞典」P94)

磁気焼鈍 (なまし)
「軟質磁性材料、たとえば鉄心用珪素鋼板、純鉄板などは圧延や打抜加工などによって内部応力を生じる。このような内部応力は当然、保磁力を高め、導磁率を減少する。このためこのような材料は応力除去焼なま(変態点以下の加熱、とくに鉄板の場合はA3点以下)を行なう必要がある。このような目的の焼なましを磁気なましという。」
(大和久重雄「金属熱処理用語辞典」P82)

光輝焼なまし
「鉄鋼の表面の酸化、脱炭を防ぎ、金属光沢を失わぬように中性ガスまたは真空中で行なう焼きなましを、光輝焼きなましという。主として薄板または仕上がり製品などの焼きなましに応用される。」
(大和久重雄「金属熱処理用語辞典」P67)

主な加工材料:SUS、SKD、SKH、パーマロイ、珪素鋼板など

プレステンパ

「プレステンパーとはテンパー(焼戻し)するとき、プレスして行なう方法であって、曲がり直しや整形に非常に有効な方法である。
プレステンパーの原理は、焼戻しのさい、組織変化や析出変化をともなう場合には塑性変形がいちじるしく促進されるということに基づくもので、したがってチンチンに焼きの入ったものを焼戻す場合、または焼戻しによっていちじるしく軟化する場合に有効である。
このため焼入れ部品を曲がり直しや整形する場合に、プレステンパーが有効になるのであって、組織的にはマルテンサイトがトルースタイトまたはソルバイトに変化する時プレステンパーがよくきき、パーライト組織のものはよくきかないのである。アメリカなどではheat setting といった薄板製の複雑な形状のワッシャなどの成形に応用している。」
(大和久重雄「金属熱処理用語辞典」P161)

オーステンパ

「オーステンパとは、過冷オーステナイトを等温でベイナイトに変化させるような冷却処理をいう。
すなわち、オーステンパは一種の熱浴焼入で、焼入温度に加熱された鋼材をMs点以上の高温冷却媒体に焼き入れし、等温変態を完了させ、もって冷却の1操作のみで焼入れおよび焼戻しのものと同様な結果を得る熱処理方法である。」
(大和久重雄「金属熱処理用語辞典」P27)

時効処理

(1) 溶体化処理 500〜520℃の温度に十分保持して合金成分を固溶体に溶解させる。
(2) 急冷 溶体化処理温度から水令して固溶した合金成分の析出を阻止する。鋼の焼入に相当する。
(3) 時効 溶体化処理と引き続いて行われる急冷処理のままでは強化されず、その後合金成分の微粒析出によって強度が増加していくが、この性状変化を安定させ、またはこの変化を促進させるための熱処理を時効という。前者は常温時効、後者を人口時効という。
人工時効は鋼の焼戻しに相当し、150℃〜200℃の温度領域で数時間から十数時間保持する。
(宮永文吾・鈴木健司「熱処理技術の選択」P78)


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